物語の紹介
キリテという名の少年……



 あたり一面、無数の紅い火の粉の群れが、狂った蛍のように死の舞踏を踊っている。ごうごうと紅蓮の炎が闇に喰いつき、喰いつかれ……。
 少年は傷つき、倒れ、その命の火は細い体の奥底で、静かに尽きようとしていた。
だが、まだ尽きてはいない。いまは、まだ……。
「おまえは、ここで終われ。この世界と共に……」
 少年は、ただ無言で、敵の眼をみつめるしかなかった。暗く、冷たい、すべての絶望が塗り込められた、死の闇のようなその瞳……。
彼は、絶望の底に沈み、すべてをあきらめかけた。
back
next

FLASHプレイヤーをダウンロード